Share
- BioDapt 社 CEO 兼創設者であり、米国パラリンピックで 3 度のメダルを獲得したデザイナー兼製作者のマイク・シュルツ氏は、コルティナで開催される大会をもって 、パラスノーボード競技から引退します。 今後は高性能義肢の技術革新を進めることに専念します。
- シュルツ氏と彼の会社 BioDapt は、オートデスクと共同で、2028 年夏を目標に、より幅広いパラアスリートのコミュニティ向けに次世代の義肢を再構想する取り組みを進めています。
- オートデスクは、コルティナでの最後の競技に先立ち、シュルツ氏と協力し、彼のレガシーデザインを Autodesk Fusion に取り込み、彼自身の競技用具と仲間のアスリートたちの競技用具の主要コンポーネントを改良しました。

Autodesk のボストンテクノロジーセンターを視察するシュルツ氏
BioDapt 社 CEO 兼創設者であり、米国パラリンピックで 3 度のメダルを獲得したデザイナー兼製作者のマイク・シュルツ氏は、 コルティナで開催される大会をもって 、パラスノーボード競技から引退します。 米国 Autodesk 社は、2028 年ロサンゼルス大会およびその先を見据え、パラアスリート向け次世代高性能義肢の開発を加速するため、BioDapt, Inc.との提携を発表しました。 このパートナーシップは、オートデスクとシュルツ氏が製造業向けにAIを活用したインダストリークラウド「Fusion」において数ヶ月にわたって築いてきた技術協力に基づいて構築されます。この協力関係は、シュルツ氏が開発した競争力の高い義肢システムの主要コンポーネントの再設計と改良に役立っています。シュルツ氏がBioDaptの創設者兼CEOに就任するにあたり、この協力関係はBioDaptが冬季および夏季パラスポーツ全体にわたるより広範なイノベーションに向けて事業を拡大していく上で大きな力となります。 世本提携のインパクトは、エリート競技の枠をはるかに超えるものです。世界保健機関(WHO)の調査によると、世界では 25 億人以上が 1 つ以上の補助器具や支援製品を必要としていますが、一部の国ではその利用率がわずか 3% にとどまっています。BioDapt 社の取り組みは高性能スポーツ分野から始まっていますが、根本的な課題は、汎用的な設計および製造の問題です。すなわち、複雑で高性能な製品を、耐久性を備え、再現性を確保しながら、より多くの人々が利用できるように構築するかということです。 パラアスリートの競技の最前線を支える、設計効率、製造性、データの一貫性における進歩の数々は、医療機器から産業機械を支える高度機器、建築製品の製造、さらには次世代コンシューマー製品に至るまで、Autodesk があらゆる業界のものづくりに提供していると同じ中核的な技術基盤です。これらの技術は、信頼性の向上、コスト削減、そして大規模な普及の実現に貢献しています。
アスリートから専業メーカーへ
シュルツ氏のキャリアは、常に一流アスリートとものづくりの担い手いう 2 つの側面を併せ持つものでした。2008 年のスノーモービル事故で片足を失った後、彼はスノーボード競技に耐え得る義足を自ら設計・製作しました。2010 年に設立した BioDapt 社は現在、パラスノーボード・ワールドカップをはじめとする国際パラスポーツ大会に出場する世界の下肢切断アスリートの約 90% を支援しています。コルティナでは、シュルツ氏が開発した義肢装具を着用する約 25 名の選手が出場予定です。 技術の進歩に伴い、エリート競技向け義肢装具の最適化の可能性はさらに広がっています。その一方で、進化は要求水準を引き上げ、再現性のある製造、耐久性、修理性、そして、遠征やトレーニング、変化する環境でも一貫した性能を発揮できることが求められています。

Fusion で設計するシュルツ氏

競技中のシュルツ氏
Autodesk Fusion で義肢設計を進化させる
シュルツ氏は、最後の競技を前に、Autodesk Research および Fusion チームと協力し、長年にわたる義肢開発データや既存の CAD モデルを Fusion に統合しました。これにより、BioDapt 社の設計データをクラウド上で一元管理する Fusion Hub を構築し、単一の信頼できる設計基盤(source of truth)を確立しました。 チームは、シュルツ選手の足首フレームとバインディングブレースの改良を最優先課題としました。3D プリント時間を延長することなく剛性を高め、寒冷環境下での性能と耐久性を最適化しました。さらに、複数の BioDapt 下肢モデルに対応できる穴パターンを追加することで、複数のバージョンを製造する必要性を軽減しました。 Fusion の設計・シミュレーション・製造を統合したワークフローにより、選手としてのシュルツ氏は、トレーニングと大会の合間を移動中でも、迅速な設計反復を実現しました。その結果、トレーニング中の耐久性が向上し、アップデート以降、部品の故障は発生していません。これは、繰り返し衝撃を吸収する部品にとって重要な進展です。 この冬の競技シーズンを通して、シュルツ氏は義肢装具の信頼性と構造的整合性への確認を深めながら競技に臨みました。装具の性能が安全性と結果に直結する競技において、これは大きな成果といえます。
今後の展望
今後はパラスポーツ分野のイノベーションに専念するシュルツ氏は、Autodesk とともに、2028 年ロサンゼルス大会およびその先を見据え、大会に向けてトレーニングを行うパラアスリートの支援に取り組みます。
今後の研究領域として、以下が挙げられます。
- 金属 3D プリントを活用した高度な足首フレーム設計
- モーションキャプチャおよび埋め込みセンサーデータの統合による、力の伝達と材料疲労の高度解析
- Fusion の AI 機能による設計改善案の自動生成および評価(トレーニング環境の変化に応じた義肢の最適化を支援)
「私のキャリアには常に二つの側面、競技とものづくりがありました」とシュルツ氏は語ります。「長年、最高のアスリートになることを目指すと同時に、そのパフォーマンスを可能にする装具の改良にも数え切れない時間を費やしてきました。競技を退く今、これまでの経験を次世代のアスリートの支援に活かせることに興奮しています。Autodesk との協業により、力の伝達の仕組みや材料の疲労箇所をより深く理解できるようになりました。小さな設計変更が、一人だけでなく多くのアスリートに確かな違いをもたらします。私たちの挑戦は、まだ始まったばかりです。」 「シュルツ氏は、一流アスリートであると同時にエンジニアとしての徹底した思考を備えています」と、Autodesk の設計・製造担当エグゼクティブ バイスプレジデント、ジェフ・キンダーは述べています。 「Fusion により、設計と製造を単一のクラウドベース プラットフォームに統合し、チーム・データ・ワークフローを連携するとともに、AI を活用してコンセプトから生産までの開発を加速します。この統合アプローチにより、あらゆるアスリートが使える高性能な義肢装具イノベーションの再現可能なモデルを生み出します。」
その奇跡をたどる
シュルツ氏が競争者から専業のイノベーターへと転身してく過程は、TFA Group と共同制作した全 3 部構成のドキュメンタリーシリーズ「Built to Move」で紹介されています。本シリーズは 2026 年 3 月 6 日より Autodesk.com にて公開されます。